訂正 (Erratta)

横山 寿敏, 田村 駿,栂 裕太: "モット転移とその周辺の物理---多体変分法の視点から---,
(その1)",「固体物理」(アグネ技術センター), 51 (No.3), 161 (2016).

この記事の 3.3節において、モット転移のメカニズムでダブロン-ホロン(D-H)の引力機構 を強相関(t/U)展開から導く議論(*4の注を含む)で、ごく初歩的で根本的な点に誤りが ありました。謹んで訂正致します。D-H 束縛によるメカニズム本体については正しいと 信じていますが、D-H 間引力の詳細については、再度考え直す必要があります。 記事では、ダブロン-ホロン間が nサイト離れた場合の強相関(t/U)展開 2n次の中間状態 を表すと書きましたが、これは直ぐ解るように明らかな誤りです。強相関展開 t/U の 2n 次の中間状態はダブロンが n個励起された状態(途中D-H対の消滅する場合もあるので、 n個以下という方が正確)なので、上記状態が t(t/U)^n のオーダーで小さくなっている 訳ではありません。一つの D-H 対が存在し D-H 間隔が n の状態を無理にt/U展開で書く なら、2次の (t_n)^2/U のオーダーに付随した状態と書くしかなさそうです。ここで t_n は nステップ離れたサイトへのホッピング積分です。実際は、ハミルトニアンで t_n (n>1)の項を考えなかったので、単純な t/U展開の援用はできないと思われます。 一方、ダブロン密度に関しては、t/U 展開で或る程度議論できるかも知れません。 一つの D-H 対が存在し D-H 間隔が n の状態の重みは、展開理論では簡単には書けない かも知れませんが、多体変分法で書くことはできます。1次元系では厳密対角化の結果が 〜exp(-αn) [α: 正の定数]の形なので、D-H 間は強い束縛があるでしょう。2次元以上の 系では大局的には n の減少関数ではあるでしょうが、単調ではないでしょう。そもそも n はベクトルとして書く必要があり、例えば、n=(2,2) と(4,0) では大分違ったものかも 知れません。このあたりは自明ではないので、今後調べて行く必要があると思います。 結論として、遠距離(n>1) D-H 間引力は、t/U 展開の高次項とは直接関係せず、その起源 や性質については、今後改めて調べて行くべき問題です。

この誤りは私一人の浅薄な思い違いによるものです。読者、関係者、共著者の皆様には御迷惑をお掛けしました。謹んでお詫び致します。 他に誤りがあるかも知れません。御叱正、御連絡頂ければ幸いです。
2016年 05月 04日 記。