小説
アフターダーク

出版:講談社
著者:村上春樹(むらかみはるき)

2年ぶり(?)に出た村上春樹の新作。作家20周年記念作品だとか。 この本の特徴はなんといっても『救いがある』ということに限る。 また視点が1人称ではなく、外部からの視点であるのも珍しい。 久々にのめり込んで徹夜で読んでしまった。

海馬 - 脳は疲れない -

出版:新潮出版
著者:糸井重里(いといしげさと)、池谷裕二(いけたにゆうじ)

脳の専門の研究者池谷裕二と、糸井重里の対話。 頭がいいとはどういうことか、というはなしからはじまり、 さまざまな脳に関する興味深いことが語られる。結構世界観が変わるかもしれない。

快楽主義の哲学

出版:文芸春秋
著者:澁澤龍彦(しぶさわたつひこ)

要約すれば、人生をいかにして楽しむかということが書かれている。

多少時代を感じるけどもう、なんというか、バイブルにしたい一冊。 紹介してくれたIさんに『バイブルだよね』っていったら、 『馬鹿だね〜』といわれてしまった。とにかくおすすめ。

カーヴァーズ・ダズン -Carver's Dozen-

出版:中央公論社
著者:レイモンドカーヴァー(Raymond Carver)
翻訳:村上春樹(むらかみはるき)

翻訳物は和訳が気持ち悪いのであまり好きではないんだけど、これは大好きな作品。 タイトル通り12個の短編小説からなる本だけど、一番のオススメはなんと言っても「大聖堂(Cathedral)」。 普通に流れていた話が突然打ち切られて読者は放り出される。 ちょうどトムとジェリーの崖のシーンみたいに。その一瞬がもう鳥肌もの。

黒魔術の手帖

出版:新潮出版
著者:澁澤龍彦(しぶさわたつひこ)

中世ヨーロッパで密かに流行した黒魔術に関連する事柄が、 歴史の授業を聴いているように語られる。 文章は様々なエピソードを経て、ジル・ド・レエの話に収束していく。 あまり歴史の表舞台には現れてこない黒魔術が語られるのが非常に興味深く、たのしい。 とくに、「カバラ的宇宙」がおきにいり。

潮騒

出版:新潮出版
著者:三島由紀夫(みしまゆきお)

これ以上無いくらい青春の純愛小説。自然の描写が美しかったのと、 一番最後の段落が印象的。ストーリーそのものは面白かったものの、 『結局何が言いたかったんだ?』というのが率直な感想。

質屋の女房

出版:新潮出版
著者:安岡章太郎(やすおかしょうたろう)

短編集。戦中,戦後のダメ人間たちの話。 一番最初に収録されている『ガラスの靴』が心情を特に見事に描いていると思う。 やっぱりいつの時代もダメ人間はたくさんいるよね。 単純に過ぎた時代は美化されているだけで、人間の本質は大して変わっていないと感じた。

斜陽

出版:新潮出版
著者:太宰治(だざいおさむ)

戦後の貴族が次第に落ちぶれていく生活を描いた作品。 文学作品としては非常にすばらしいんだけど、その分読むのに体力、精神力が必要。 かなりつらくなって、時間を置いて読んだ。

世界悪女物語

出版:文芸春秋
著者:澁澤龍彦(しぶさわたつひこ)

メアリスチュアートだとか、いわゆる『ベルばら』で有名なマリーアントワネットなどの 『悪女』のお話。本文にも書いてあるけど、 現代の尺度で過去の時代の風俗や道徳を計ることくらい危険なことはない。 こういう人たちは、現代では、 人間味のかけらもない極悪非道な人として書かれることが多い。 歴史ってのは一方的な(現代人からの)視点でしか書かれないことが多いので、 誤認してしまうことがよくある。その間違いを多少なりとも改善してくれるんじゃないだろうか? 偏っているけど、歴史を知るのにもおすすめ。

葬送 第一部上・下、第二部上・下

出版:新潮社
著者:平野啓一郎(ひらのけいいちろう)

音楽家ショパンの晩年を、主に友人の画家ドラクロアの視点から書いたお話。 視点は散漫、主題はぼやけて、作者の知識をひけらかされているような文章でつまらない。 とりわけ、第二部の下に入ってからは何度も読むのをやめようかと思った。 この人はもっと短い小説を書いた方が向いていると思う。 文章はところどころいいこと言っていると感じるんだけど。

高岳親王航海記

出版:文芸春秋
著者:澁澤龍彦(しぶさわたつひこ)

実在の人物を題材にして作り上げた幻想的なお話。 平野啓一郎の世界に似てるような気がする。 漢字は平野啓一郎ほど厳しくはないけど。

実在の人物高岳親王(たかおかしんのう,みこ)が天竺を目指す旅を書いたもの。 最初は比較的のほほんとした旅をしているんだけど、途中転機が訪れる。 その転機を境にして移り変わっていく、御子(みこ)の死や渡天に対する心情が見事。 この御子のように穏やかに死を迎えたいものです。

ドミノ

出版:角川書店
著者:恩田陸(おんだりく)

ライトノベル。ある一人の行動が別の人の人生を大幅に左右するといった、 某ゲームと同じテーマ。某掲示板で紹介されてたので購入。 全くの他人同士のちょっとした行動が歯車となって、話が奇妙な方向へと進んでいく。 人と人との関わり合いが面白いはずなんだけど、無理にこじつけたようで違和感がある。 ちょっと期待はずれ。 このようなストーリーは「グランドホテル」という映画が元祖だそうです。

人間失格

出版:新潮出版
著者:太宰治(だざいおさむ)

いわずと知れた太宰治の代表作。予備校時代に『鬱になるから読むんじゃない』 といわれ、ずっと敬遠してきたんだけど、意を決して読むことに。

話は小説中の主人公の手記として語られているんだけど、この人物が人間失格ねえ〜? この人が失格ならば世の中の大多数の人は失格なんでしょう。

想像してたほど暗い話ではなく、むしろコメディに近いかも。

プールサイド小景・静物

出版:新潮出版
著者:庄野潤三(しょうのじゅんぞう)

若い夫婦をメインに描いた短編集。一つの家庭の異なる時期をいくつかに分けて描いてある。 『静物』を目当てに買ったんだけど、一番のお気に入りは『舞踏』。 交互に描かれる夫と妻の心情に引き込まれる。

この本を通して読むと「男って本当に馬鹿だな」と、ひしひしと感じます。