8. 電場下の計算

ここでは、電場下の電子状態の計算方法について紹介します。 電場を扱う方法としては、以下の3通りの方法が実装されています。

  1. ノコギリ型のポテンシャルを追加する方法。

    最も単純な方法です。ここではこの方法について説明します。

  2. Effective screened medium (ESM) を用いる方法。

    詳細は こちら をご覧下さい。 quantum ESPRESSO にもデフォルトで実装されています。 INPUT_PW.html の esm がつくオプションの説明も参考にしてください。 Examples の中にも例があります。(qe-7.1 だと PW/Examples/ESM_example)

  3. "Modern theory of polarization" の方法を用いる方法。

    バルクに一様電場をかけたときの電子状態を計算します。 詳細は Examples の中の例を参考にしてください。(qe-7.1 だと PW/Examples/examples10)

8.1. 電場下での2層グラフェン

例として2層グラフェンに面に垂直な一様電場Eをかけることを考えます。 電場の向きをz方向とするとこれはポテンシャルとしては、V(z) = -Ez を追加することになります。 実際には周期的境界条件でこのようなポテンシャルを印加することはできないので、真空領域を充分大きく取り、図のようにポテンシャルを追加します。

_images/efield_schematic.png

この状況をに対応するscf計算のインプットファイルが graphene.scf.in です。 まず、

 tefield =.TRUE.
 dipfield =.TRUE.

でノコギリ型ポテンシャル下の計算であることを指定し(tefield)、 ダイポール補正を入れています(dipfield)。 次にノコギリ型のポテンシャルの形状を以下の部分で指定します。

 edir =3,
 emaxpos =0.45,
 eopreg =0.10,
 eamp = 0.009723452336177272

eamp の単位は 1 a.u. = 51.4220632*10^10 V/m です。 この例では、E = 0.5 V/A かけていることになります。 edir は格子ベクトルa3(今の場合z軸)方向の電場であることを表しています。 emaxpos と eopreg は図の通りで、格子ベクトルを単位として 0 から 1 の間で指定します。

このときのバンドをかいてみましょう。 バンド計算の方法は電場をかけていないときと全く同様に行うことができます。

結果、以下のようにバンドギャップが開くことが確認できます。

_images/band.png

なお、このK点周りでのバンド構造は scf 計算のときのk点メッシュのサイズに大きく依存します。 この図のバンド構造はk点メッシュに対して全然収束していないので注意してください。