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物理学CのTAを担当している杉原です。
皆さんは今セメスター、物理学Cで熱力学を勉強していますが、この熱力学という学問は力学や電磁気学とちょっと毛色が違っています。
熱力学は初めは取っ付きにくいと思います。なので、授業と最後に行う練習問題で少しでも熱力学の楽しさが伝わってもらえたらと思います。
特に、第2法則とエントロピーは非常に重要な量となりますので、その意味を数式だけでなく、日本語でも表現できるようにしておくと良いと思います。
熱力学は第1から3法則までを基本法則(公理)とした学問体系となっています。 熱力学はこの基本法則に、状態方程式という形で考えている系(ガスだったり、ゴムだったり)の個性を取り入れる事で、多種多様な系を取り扱う事ができます。 熱力学は現象論に徹し、状態方程式の内部(つまりは仕組み、原理です)に立ち入らない為、適用範囲が非常に広くなります。 実際、皆さんが授業で(高校生の頃から)よく取り扱っている理想気体を初めとし、Van der Waals気体や磁性体、ゴム、あげくは宇宙の問題まで熱力学で解く事ができます。
非常に適用範囲の広い熱力学ですが、まずはその本質を見ていただきたいとの思いから、理想気体を中心に問題を作っています。
また、各々の問題は互いに関係している部分もありますので、そのようなコメントをこちらのweb pageで公開していきたいと思います。
全ての小テストをuploadしました。復習に皆様お使いください。
等温過程に於ける理想気体がうけとる仕事をもとめる問題です。
外部から熱をもらっているのに理想気体の内部エネルギーが上がらないのは、内部エネルギーの状態方程式が体積には依存せず、温度の1次に比例する関数のためですが、これに気づくのが難しいようでした。
かくいう私も、なんだかんだと直感的に分からなかった問題です。
これは理想気体特有の現象ともいえますが、後ほど(時間があれば)どういう条件で内部エネルギーが体積によらないかという問題も作ってみたいと思います。
[追加問題]エントロピーの増加はどうなっているか? 自由膨張の系と比べてみよ。
Van der Waals気体の状態方程式をビリアル展開の形に変形する問題です。
東北大学(物理学科)では統計力学を3年生の1年間で勉強します。
そこで、相互作用のある気体の状態方程式が最後の方で出るかと思いますが、統計力学で導出するとVan der Waals状態方程式ではなく、ビリアル展開した形になります。
今回は、第2ビリアル計数をもとめてみることで、その形がどうなっているのか見てみようという問題です。
ここで注意していただきたいのは、いま希薄な気体を扱っているので、圧力は非常に小さい(密度の1次)ということです。
そのため、圧力項に付随する計数aの項は捨てる事ができません。
これを見落としている解答が多かったですが、常日頃から考えている量がどのようなオーダーかを意識して計算すると、今後の物理学の授業や研究に於いて威力を発揮するかと思います。
理想気体の断熱変化の問題です。
授業で導出した一般式を理想気体のときに(特殊な状態で)導出してみようと言う問題です。
断熱変化というのは、現実世界では熱の出入りにかかる時間より早い時間で仕事をする(今回はピストンを押す)と起こります。
断熱過程では温度変化が起こります。
この温度変化は断熱変化の一般式から始状態と終状態だけあたえれば求まる事がわかります。
自転車に乗って登校している方で、タイヤに空気を入れた後の空気入れの下の部分をさわって、「あちっ」っとなったことがある人もいるかとおもいます。
これが断熱圧縮過程の一つの例となります。
理想気体を用いたOtto cycleの問題です。
前回までで等温、断熱過程をやりましたので、あとは定積か定圧過程が残っています。
この2つの過程は単純に計算ができるため、今回は定積変化を取り扱う問題を考えました。
また、熱機関の問題を授業でやっているため、実際のサイクルを計算する問題にしてみました。
オットーサイクルは体積比を大きく取れば効率が良くなる事がわかります。
[追加問題]オットーサイクルの効率を体積を用いて表せ。
カルノーサイクルで動く熱機関と一般のサイクルで動く熱機関の効率を比較する問題です。
比較するためには、カルノーサイクルを逆回転(C*)した熱機関と一般の熱機関を合わせた系(合成系)がどのように振る舞うかを考えます。
ここで重要となるのが熱力学の第2法則です。
今回は「一つの熱源から熱を取り出して全て仕事に変換する事ことは不可能(Thomsonの原理)」という制約を受けるため、
合成系の効率とカルノーサイクルの効率に大小関係が成立します。
[追加問題]カルノーサイクルの効率より一般のサイクルの効率が大きい熱機関は作れない理由を答えよ。
(問題文の合成系の逆サイクルを考える。講義ノート参照。)
カルノーサイクルをエントロピーSと温度Tを使って考える問題です。
今まで目にしてきたカルノーサイクルはpVグラフ(圧力-体積グラフ)に描かれたものがほとんどだったと思います。
pV図では、気体のした仕事が直感的に分かりやすいからです。
しかしST図でカルノーサイクルを考えると、長方形という非常に美しい形にサイクルを描く事ができます。
また変数を変えてグラフを書く事で、このサイクル中における各過程でのエントロピー変化を容易に計算できます。
これは、仕事を求めるための計算量も格段に減らせることを意味しています。
断熱自由膨張のエントロピー変化を求める問題です。
断熱自由膨張は不可逆過程ですから途中の過程はグラフ上に示せませんし、断熱自由膨張だけを考えてもエントロピーが取りうる値の範囲しかわかりません。
そこで始状態と終状態が等しい準静的過程でエントロピーの変化を計算します。
これはエントロピーが状態量であり、途中の経路に依らない事から可能になります。
第2法則でどこまでものが言えるのか、正確に計算するにはどうしたらよいのかを分けて考えると、熱力学が更に楽しくなると思います。
ゴム紐の性質を熱力学で考えてみる問題です。
今までは気体に対しての考察(問題)が主でしたので、実際の熱力学の応用としてゴム紐を取り上げてみました。
ゴム紐の状態方程式において、力fは温度Tの1次に比例しています。
これは内部エネルギーが温度Tにのみ依存し、変位xには依らないことを意味しています。
授業では理想気体でこのことを示しましたが、実際の物質の例としてゴム紐が同じように振る舞う事を数式を用いて示してもらいました。
ゴム紐の状態方程式がなぜこのような形なるかは統計力学の知識を用いて示されます。
ゴム紐の性質を熱力学で考えてみる問題、第2段です。
前回の問題で、ゴム紐の内部エネルギーは温度だけにより体積には依らない事を示しました。
今回は、断熱の状態でゴム紐を引っ張る(xを大きくする)とどうなるかを見てもらいました。
太めのゴムを、伸ばした状態から一気に縮めると、温度が下がる事が実際に確かめられると思います。
[追加問題]小テストの結果から、断熱過程における温度T(の上昇)を変位xの関数として表せ。
オイラーの関係式とギブス-デュエムの関係式を導く問題です。
オイラーの関係式はエントロピーが示量変数であることを用いて導出します。
また、ギブス-デュエムの関係式は示強変数の3組が1次従属の関係となることを示します。
これら2つの関係式は、時折使いますので導き方を覚えておくと便利かと思います。