Oct 2006
津田敏秀氏の大学院講義「科学者の科学音痴」(11月1日)
18/10/06 12:57
11月1日(水)に,岡山大学の津田敏秀氏にお越し頂き,理学研究科大学院講義「科学基礎論」で講演をして頂きます.
津田さんが著書「医学者は公害事件で何をしてきたのか」(岩波書店)でお書きになっているように,日本の科学者の多くは,実は科学の基礎をよく理解していません.科学とは,自然現象を要素還元論的に,原子・分子レベルで理解すること・・・と信じて疑わない研究者が少なくないのです.だから,水俣病が発生したときも,本来「食中毒」として対応していれば被害を防げたのに,「原因」が分からないと言って対応を先送りし,被害を拡大させてしまいました.「原因」というときに,暗黙の内に要素還元論を仮定し,ミクロな物質レベルでしか物を見ていなかったからです.食中毒という「現象論」的な視点に立てば,水俣病の原因は「魚」です.「魚」の摂取と,病気発生の間の因果関係を明らかにすれば,「水銀」などを持ち出さなくても,被害の拡大を防げたのです.
物理学は,自然現象を原子・分子レベルで解明する学問だという「迷信」も,日本では少なくありません.でも,それはとんでもない勘違いです.熱力学という,物理学の理論体系があります.この熱力学では,原子も分子も理論に出てきません.出てくるのは,圧力,温度,体積などです.原子・分子などのミクロな物質を持ち出さなくても,圧力や温度,体積などで理論が出来てしまうところに,熱力学の価値,適用範囲の広さがあるのです.必要もないところで,原子や分子を持ち出すのは,意味がないだけではなく,むしろ見通しを悪くします.
日本の科学は,欧米の科学ほどオリジナリティー(独創性)がないという批判があります.どうしてでしょうか? それは,日本の科学者の多くが科学とは何か? という基本を,真剣に考えていないからだと私は思います.つまり,教科書に書いてあることを,誰かが先にやったことを,その枠組の中で繰り返すのが科学だと勘違いしているかのようです(ニュートン以前にニュートン力学は存在したのでしょうか?).欧米の研究者は,日本の研究者からみてびっくりするような,斬新な発想で,これまでにない新しい学問体系を築くことが多々あります.日本の研究者にはなかなか出来ません.その違いは・・・もう説明するまでもないでしょう.事実,欧米の理系学部では必修になっている科学哲学は,日本では必修ではありません.
11月1日 東北大学大学院理学研究科大学院講義「科学基礎論」
題目: 科学者の科学音痴 ー科学者にとっての哲学とは何かー
講師: 津 田 敏 秀 さん(岡山大学 大学院 環境学研究科・教授)
日 時: 2006年11月1日 (水),16時~18時
場 所: 理学研究科 地学・生物共通講義室
講演ポスターはこちら
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津田さんが著書「医学者は公害事件で何をしてきたのか」(岩波書店)でお書きになっているように,日本の科学者の多くは,実は科学の基礎をよく理解していません.科学とは,自然現象を要素還元論的に,原子・分子レベルで理解すること・・・と信じて疑わない研究者が少なくないのです.だから,水俣病が発生したときも,本来「食中毒」として対応していれば被害を防げたのに,「原因」が分からないと言って対応を先送りし,被害を拡大させてしまいました.「原因」というときに,暗黙の内に要素還元論を仮定し,ミクロな物質レベルでしか物を見ていなかったからです.食中毒という「現象論」的な視点に立てば,水俣病の原因は「魚」です.「魚」の摂取と,病気発生の間の因果関係を明らかにすれば,「水銀」などを持ち出さなくても,被害の拡大を防げたのです.
物理学は,自然現象を原子・分子レベルで解明する学問だという「迷信」も,日本では少なくありません.でも,それはとんでもない勘違いです.熱力学という,物理学の理論体系があります.この熱力学では,原子も分子も理論に出てきません.出てくるのは,圧力,温度,体積などです.原子・分子などのミクロな物質を持ち出さなくても,圧力や温度,体積などで理論が出来てしまうところに,熱力学の価値,適用範囲の広さがあるのです.必要もないところで,原子や分子を持ち出すのは,意味がないだけではなく,むしろ見通しを悪くします.
日本の科学は,欧米の科学ほどオリジナリティー(独創性)がないという批判があります.どうしてでしょうか? それは,日本の科学者の多くが科学とは何か? という基本を,真剣に考えていないからだと私は思います.つまり,教科書に書いてあることを,誰かが先にやったことを,その枠組の中で繰り返すのが科学だと勘違いしているかのようです(ニュートン以前にニュートン力学は存在したのでしょうか?).欧米の研究者は,日本の研究者からみてびっくりするような,斬新な発想で,これまでにない新しい学問体系を築くことが多々あります.日本の研究者にはなかなか出来ません.その違いは・・・もう説明するまでもないでしょう.事実,欧米の理系学部では必修になっている科学哲学は,日本では必修ではありません.
11月1日 東北大学大学院理学研究科大学院講義「科学基礎論」
題目: 科学者の科学音痴 ー科学者にとっての哲学とは何かー
講師: 津 田 敏 秀 さん(岡山大学 大学院 環境学研究科・教授)
日 時: 2006年11月1日 (水),16時~18時
場 所: 理学研究科 地学・生物共通講義室
講演ポスターはこちら
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